
〜4%を占める(図1参照)と概算されている。飲酒が原因の障害や死亡が、世界中ほとんど全ての国において大きな負担となっている。アルコールが関与する健康上の問題には、事故や怪我、脳血管疾患、がん、肝硬変、アルコール性精神疾患、胎児アルコール症候群等がある。飲酒問題は個人に影響を与えるだけでなく、様々な社会問題にも関与している。犯罪、暴力(特に、女性や子供に対するもの)、離婚、生産性の低下、学業成績の低下、高い欠勤率、自殺、借金、児童虐待、その他家庭や社会の崩壊等を例として挙げることができる。 若年者は特に急性アルコール中毒にかかりやすい。これは、若者の場合、アルコールに対する耐性が低いこと、飲酒の経験が浅いこと、たまにしか飲まないが飲むとなると危険度の高い状況で飲むなど、危険な飲酒形態によるものである。 女性は男性に比べてアルコールの害を受ける危険性が高い場合がある。これは体重や、体脂肪組織の構成等、体質的な相違によるものである。同量のアルコールを摂取しても、血中アルコール濃度は女性の方が男性より高くなる。また妊娠中の飲酒が一因となって流産や死産、早産、胎児アルコール症候群の危険性が高まることもある。 アルコールが関与して起こる問題の範囲と深刻さは、国内でも、また国や地域によっても異なる。先進国における飲酒問題の程度に関しては文書によって十分証明されていると言えるかもしれないが、途上国の現状については重大な問題の報告件数が増えているにも関わらず、十分には実証されていない。 国によって問題の形態が異なるのは文化的伝統や社会経済の発達の相違に関連している場合が多い。例えば、民衆のアルコール使用を社会が管理してきた歴史はそれぞれ異なるであろうし、伝統的な社会にはそれぞれ異なる飲酒形態があるであろう。 差違をもたらす変動要因は他にも様々なものがある。都市部と農村部の人口比等の要素を考慮に入れることも重要である。これは特に途上国の場合に必要である。問題が発生した際、当事者が医療を受けるにとのできる状況にあるか否かに関わってくるからである。年齢別人口構成も飲酒に関連した有害事象の程度の判断に影響を及ぼす要因である。多くの国では子供は飲酒をしないため、14歳未満の子供が全人口に占める割合が重要な要因となる。また収入ごとの人口分布や人口における成人禁酒家の割合も重要な要因である。文化または宗教上の理由で飲酒をしない大人が人口に占める割合や特徴は、国によって大きく異なるであろう。 飲酒の回数、一回の飲酒で消費するアルコールの量、摂取するアルコール飲料の種類も、差違をもたらす変動要因である。例えば、ビールを飲む国よりも蒸留酒を飲む国においてアルコールの関与する食道がんの罹患率が高い。 このように様々な相違があるため、差違を考慮に入れずに各国における影響や反応を一般化して考えることがあってはならない。政策およびプログラム策定に関して言えば、ある国に対して効果のある方法が他の国でも効果があるという前提に立ってはならないということである。 世界共通の防御効果というものはあるのか 先に述べた通り、地域によってアルコールの影響が異なるのは、アルレコール消費量の相違のみならず、年齢別人口構成の違いも原因となっている。アルコールには虚血性心疾患による死亡を防ぐ効果がある程度あるが、逆にアルレコール性精神病、膵炎、ある種のがんや肝硬変等の病気に
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